腎盂、尿管、膀胱、尿道の中で、尿路がんと呼ばれるがんに最もなりやすいのは膀胱です。これには理由があり、体内に取り入れられたさまざまな発がん性の物質は膀胱内で最も長い時間貯えられることになります。その結果、膀胱は他の尿路器官に比較してひじょうにがんになる確率が高くなっているというのです。

膀胱は腎臓で漉しとられた尿を貯蔵しておく伸縮性のある器官です。 膀胱の内部表面は移行上皮という膜で覆われています。膀胱がんのほとんどはこの移行上皮で発生するものです。がんの粘膜にとどまっていて転移や浸潤する心配の無いものは表在性がんと呼ばれています。この場合がんは膀胱の内側に向かって進行することになります。

これに対して浸潤性のがんは全体の20〜30％ほどで、 その名の通り浸潤や転移をしやすく、予後はあまり良くありません。またこれらとは別に上皮内がんと呼ばれるものもあり、治療が遅れると浸潤する可能性があります。

膀胱がんの症状で最も注意すべきものは血尿です。膀胱がんにおける血尿はワイン色、コーヒー色など、目で見てそれとわかるような場合が多いのですが、痛みが伴いません。そのため同じ血尿でも尿路結石などのように、激しい痛みや発熱を伴う場に比べるとあまり重要視されないことが多いようです。血尿はいったん引いて1年後程度で再発するようになりますが、この時にはかなりがんが進行していることが多いため、たとえ痛みを伴わなくとも血尿があった場合には充分に注意し、必ず詳しい検査を受けるようにしましょう。

また膀胱がんの最初の症状が、排尿時の痛みである場合もしばしば見受けられます。排尿時の痛みは膀胱炎などの炎症でも起きますが、膀胱がんの場合には抗生物質を利用しても痛みが取れないのが特徴です。また膀胱がんが進行すると、尿が膀胱まで降りてくることができないため腎盂などに尿が貯まることで、背中に痛みを感じることもあります。

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